鍼灸施療で扱うことの多い症状

2023年5月6日

鍼灸施療では、肩こり・腰痛などの運動器疾患をはじめ、不妊症・不育症・生理不順・子宮筋腫・卵巣機能不全・つわり(悪阻)・逆子(骨盤位)などの婦人科系のお悩み、頭痛・睡眠障害(不眠症)・自律神経失調症・めまいなどの神経系のお悩み、ダイエット(耳はり療法)などの代謝系のお悩みなど、多岐にわたり対応しております。

目次

婦人科系のお悩み

不妊症

不妊症とは》

妊娠を望む男女が1年以内に妊娠しない状態をいいます。

理論上 排卵日付近に避妊をせずに性交渉をして妊娠する確率は20%、3か月で約50%6か月で約70%、

1年で約90%の人が妊娠 します。

不妊症の原因は男性・女性または両方にあり、精子・排卵・卵管の障害は全体の1/3、ほかに子宮頚部粘液異常や原因不明もあります

男性側に原因がある場合は40%、女性側に原因がある場合は40%、両方にある場合が15%、原因不明が5%

といわれています。したがって、診断は男女双方の十分な検査が必要になります。

年齢も不妊に関係します。特に女性は年齢とともに妊娠しにくくなり、また妊娠中の合併症のリスクも高くなります。

《不妊症の原因(女性側因子を中心に)》

①排卵因子(排卵障害)

うまく排卵が起こらないことを言います。月経不順があることが多いです。基礎体温が二相性であれば心配はありませんが、これに当てはまらない場合は、排卵障害の可能性があります。

ストレス・ダイエット・早発卵巣不全(早発閉経)高プロラクチン血症多嚢胞性卵巣症候群などでおこります。

卵管因子

卵管の閉塞や卵管周囲の癒着により、卵管に卵子がうまく取り込まれにくくなっている状態です。クラミジア感染症(感染しても自覚症状がないことが多い)・子宮内膜症虫垂炎などの手術が原因となることがあります

頸管因子

子宮頚部の手術(子宮頚部円錐切除術)や炎症により、精子が子宮内に入ってこられない状態。

子宮因子

子宮内腔に異常をきたすような子宮筋腫子宮内膜ポリープ子宮内腔癒着、先天的子宮奇形などにより、着床しにくい、または精子が卵管までたどり着けない状態。

免疫因子

何らかの免疫異常で抗精子抗体が存在している状態。頸管粘液内に分泌され精子の通過を妨げたり、卵管内で分泌され受精卵を妨げる。

原因不明

検査上明らかな異常を認めない。

《検査と診断》

①排卵因子

基礎体温が二相性になっているか、排卵前後の超音波検査、ホルモン基礎値、黄体ホルモン検査、プロラクチン検査、甲状腺ホルモン

②卵管因子

卵管が通過しているか。卵管造影検査 卵管通水検査 クラミジア感染検査

③頸管因子

フーナー試験(性交渉後頸管粘液検査) 頸管粘液の中で動いている精子がいるか確認する

④子宮因子

超音波検査やMRI検査で子宮の形態を、子宮鏡検査で子宮内腔の状態を見る

⑤免疫因子

抗精子抗体検査

《西洋医学の治療》

1.排卵誘発法

内服や注射で卵巣を刺激し、排卵を起こさせる

2.タイミング療法

排卵予定日より前に超音波検査で卵巣内の卵胞(卵子の入っている袋)の大きさを測定し、排卵日を予測。排卵日の2日前から排卵日までに性交渉を持つよう指導する

3.人工授精

精液から運動性の良い精子を洗浄・回収し、排卵に合わせチューブで子宮内に注入する

4.生殖補助医療(体外受精)

膣から針を刺して卵子を採り(採卵)、体外で受精させ、後日受精卵を子宮内に戻す(肺移植)

基本的には、段階的にステップアップする

排卵誘発法⇒タイミング療法⇒人工授精⇒生殖補助医療(体外受精)

検査で異常が見つかれば、それに応じた治療を開始する

①排卵因子

排卵誘発法+タイミング⇒人工授精⇒生殖補助医療

②卵管因子

年齢が低いまたは疑われる場合 手術⇒タイミング⇒排卵誘発法⇒人工授精⇒生殖補助医療

年齢が高いまたは確定 生殖補助医療

③頸管因子および⑤免疫因子

人工授精⇒生殖補助医療

④子宮因子

年齢が低い 手術⇒タイミング⇒排卵誘発法⇒人工授精⇒生殖補助医療

年齢が高い 生殖補助医療(採卵)⇒手術⇒生殖補助医療(肺移植)

2022年4月から保険適用になり(年齢や内容により条件あり)、経済的心理的負担が減るが、残念ながら治療は万全ではない

当治療室の取り組み

古来中国より、大変長い間不妊症の施療を鍼灸施術や漢方で行っており、ノウハウがあります。また、患者さまのその日の健康状態を考慮し、有効なツボ刺激を組み合わせた施術は、日本のみならず欧米でも近年注目されています。私たちのカラダは、ストレスや環境の変化が原因で、本来持っていたカラダの機能が眠ってしまったり、低下することが多々あります。また、西洋医学で使用された薬や検査はカラダや心にストレスを与えることもあり、期待された効果や結果と同時に、カラダの機能を低下させてしまうことがあります。鍼灸施療は、こうした衰えてしまった本来持っているカラダの力を目覚めさせ、回復し、軌道修正させます。

具体的に例えれば、鍼灸施療は周期に合わせて子宮や卵巣の血行促進のツボを刺激し、必要なものを与え、いらないもの余計なものを排出することによって、

月経周期が安定し妊娠しやすくなる

むくみがとれ卵管が広がり通りがよくなる

卵巣の働きがよくなるので質の良い卵子が採れるようにな

子宮内膜が厚くなり着床しやすくなる

子宮の血行がよくなるので妊娠維持ができる など

です。

また当治療室では、患者さまには一日でも早く妊娠・出産ができますよう、西洋医学との併用もおすすめしております。東洋医学の施療でカラダの本来持っている機能を高め、同時に西洋医学の治療にあわせ体調を整えることができますから、不妊症に鍼灸施療を組み合わせてはいかがでしょうか

不育症

《不育症とは》

不育症とは

妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない状態 (日本産科婦人科学会)

と定義づけられています。一般的に、原因に関係なく流産を2回繰り返すと不育症、3回連続流産すると習慣流産といいます。不育症は、流産や死産の回数で定義され、母体に原因がなくても(検査をして異常がなくても)流産回数が2回以上あれば不育症といいます。

また、子供がいてもその後2回以上流産を繰り返す場合、1回でも10週以降の流産歴がある場合も不育症に含まれます。次回の妊娠で流産や死産のリスクが高い場合を総称して、不育症の概念に含まれるようになりました。

一般的に流産の確率は15%といわれており、これを2回繰り返すということは

0.15×0.15=0.0225(2.25%)

となりますが、実際は5%のカップルに不育症が見られますので、なんらかの流産因子が存在するといっていいと思います。

日本では、2回以上の流産既往歴がある人は3.1万人、そのうち3回以上の流産既往歴がある人は6,600人と推定されています。

《不育症の原因》

抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体という自己抗体を持ち、血栓症、死産、流産を起こす。

子宮形態異常(子宮奇形)

先天的な中隔子宮(子宮奇形)があると、流産を起こしやすい。

③夫婦染色体異常

夫婦のどちらかに染色体異常(転座など)があると流産を起こしやすいが、転座があっても元気な赤ちゃんを産むことは十分可能である。

血液凝固異常

血栓性素因(血が固まりやすい状態)では、流産の原因になることがある。

内分泌代謝異常

甲状腺機能異常糖尿病などが原因となるといわれている。

⑥その他

免疫異常など

①抗リン脂質抗体症候群 ②子宮形態異常(子宮奇形) ③夫婦染色体異常 の3つは不育症三大原因(次回妊娠での流産・死産に強く影響を及ぼす因子)といわれています。

流産の60~80%は胎児の染色体異常です。不育症の40%は偶然発生した胎児の染色体異常を繰り返した結果といわれています。また、年齢の高い女性で不育症検査をしても異常がない場合は、胎児の染色体異常を繰り返していた可能性があります。

《不育症の西洋医学での治療》

①抗リン脂質抗体症候群

抗血栓療法(血液をサラサラにする治療)を行います。

1.低用量アスピリン療法 バイアスピリン バファリン内服 

2.ヘパリン療法 ヘパリンカルシウムの自己注射

②子宮形態異常

子宮鏡下中隔切除術を行います。ただし、手術の有効性には賛否があり、手術をしなくても出産する例はあります。

③夫婦染色体異常

残念ながら根本的な治療法はありません。最近では、着床前検査(PGT-SR)で流産率をへらす試みがなされています。しかし、着床前検査には倫理的(命の選別、受精卵の廃棄など) 経済的(PGT-Aを行うと保険適用外) 技術的(すべての症例に有効ではない、出産率を向上するわけではない) 自然妊娠が可能な人は対象外という問題点もあります。

④内分泌代謝異常

甲状腺機能異常の時は、専門医の下治療を行います。糖尿病や高プロラクチン血症では、減量や中止を含め薬物療法でコントロールします。

⑤血液凝固異常

血液凝固異常には、さまざまな原因があります。それぞれの因子製剤を投与します。

当治療室の不育症のアプローチ

専門医などの治療法と併用し、基本的には不妊症と同様の施術をすることで、全体のお身体の調子を整え、卵子の質を上げ、妊娠しやすい子宮と卵巣の環境を作り、出産まで維持できる力をつけていきます。

生理不順

生理不順とは、通常25日から38日で起こる生理周期が長かったり(希発月経)短かったり(頻発月経)、妊娠していないのに3か月以上月経がなかったり(無月経、続発性無月経)月経の周期が不安定(毎回の変動が7日以上)といった月経周期の異常、出血期間が異常に短かったり(2日以下)異常に長かったり(8日以上)する月経期間の異常、出血が20ml未満または140ml以上の経血量の異常をいいます。

《生理不順の原因》

生活環境の変化、ダイエットや体重の増加、ストレス、激しい運動、不規則な生活などにより視床下部に障害が起こりそのためホルモンのバランスが乱れて起こるもの、卵巣の異常(卵巣腫瘍ターナー症候群など)、脳下垂体の異常、甲状腺機能低下症、うつ病治療薬、抗がん剤や放射線治療などの影響、ポリープや子宮の腫瘍などでも月経不順になることがあり、異常を感じたらまずは専門医に受診しましょう。

《検査・診断》

①問診:月経の状態、既往歴、妊娠分娩歴、内服薬などのほかに、基礎体温をつけている場合は基礎体温表を提出します。

②血中ホルモン濃度:エストラジオール(エストロゲン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)、黄体形成ホルモン(LH)卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどを調べます。

③視診経膣超音波検査で子宮や卵巣の状態を調べます。

《治療》

脳や卵巣に腫瘍が見つかった場合は薬物治療や手術による切除、甲状腺機能低下症の場合は甲状腺ホルモンの補充、薬剤が原因による高プロラクチン血症の場合は治療の優先度を考慮し処方の変更を検討します。体重やストレスが原因の場合は、生活指導やカウンセリングを行います。また、低用量ピルはホルモンバランスを整えることが期待できるので、処方されることがあります。

当治療室の取り組み

病院での治療の必要がない場合や治療(手術の場合は術後)と併用して行います。

鍼灸施療では、腹腔動脈の血流量が増えるツボを刺激し、卵巣や子宮の血行が促進されるので卵巣機能が活性化し、子宮の本来の働きを整え、月経を正常化させます。

生理痛

生理痛とは、生理期間およびその前後に起こる腹痛・腰痛・頭痛のことを言います。吐き気・貧血・食欲不振を伴うこともあります。痛み具合や症状には個人差があり、毎回異なる場合もあります。生理痛は女性の日常生活や社会活動に影響を及ぼすこともあり、放置すると不妊症などの原因となることもあります。

《原因》

経血を排出する際にプロスタグランジンというホルモンが関与しているといわれています。このプロスタグランジンが過剰に分泌されて子宮が過敏に反応し収縮すると生理痛が生じます。喫煙習慣があると症状が重くなるといわれています。

子宮やその周辺の臓器に痛みを引き起こす病気がないものを機能性月経困難症といい、冷えやストレスなどが原因の血行不良によるものやホルモンバランスの乱れが原因の生理痛を言います。

子宮やその周辺の臓器に痛みを引き起こす病気があるものを器質性月経困難症といい、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣嚢腫、骨盤の炎症などの病気が原因の生理痛を言います。

このように、生理痛には病気によるものがあるので医療機関を受診することが大切です。特に急に痛みが強くなったり、長く続いたり、次第に悪化するようになったり、月経中でなくても痛みがあるときなどは早めに受診しましょう。

《検査・診断・治療》

内診や経腟超音波検査で、子宮内膜症や子宮筋腫などの器質的原因があるか調べます。さらに検査が必要な場合はMRI検査や子宮卵管造影検査なども行われます。

痛みを引き起こす病気がある器質性月経困難症の場合は、原因となっている病気の治療をします。

痛みを引き起こす病気がない機能性月経困難症の場合は、定期的な運動や睡眠などで十分に休養をとり、鎮痛剤や低用量ピル、漢方薬を用いて症状を軽減します

当治療室の取り組み

東洋医学では、痛みを引き起こす病気のない機能性月経困難症を症状の軽減ではなく根本的に治療します。西洋医学とは大きく異なる点です。

鍼灸施療では、腹腔動脈の血流量が増えるツボを刺激し、卵巣や子宮の血行が促進されるので卵巣機能が活性化し、子宮の本来の働きを整え、月経を正常化させることで生理痛のない状態にしていきます。

月経前症候群(PMS)

月経困難症とは、生理痛が非常に強い状態のことです。頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、嘔吐、吐き気などを伴うこともあります。月経困難症には、子宮などの臓器に病気が見られない機能性月経困難症と、子宮筋腫子宮内膜症などの病気が原因の器質性月経困難症があります。月経困難症は若い女性に多く見られ、日常生活に支障をきたすことや、子宮内膜症を発症することもあります。このように疾患が原因のこともあるので、婦人科での受信が必要です。

《症状》

生理開始3日前後の間に、非常に強い下腹部痛が生じるのが特徴です。痛みのピークや継続期間は個人差があります。

《検査・診察・治療》

経腟超音波検査、経直腸超音波検査、経腹超音波検査などで子宮、卵管、卵巣に異常がないか調べます。異常が見られた場合は、MRI検査、子宮鏡検査、血液検査などでさらに詳しく調べます。

異常が見られない場合は、鎮痛剤を用います。80%で効果が見られますが、効果がない場合は低用量ピルを服用して子宮内膜をコントロールし、月経量を少なくします。

月経困難症に対する当治療室の取り組み

まずは医療機関にて原因を調べていただきます。異常のない場合や異常が見られ医療機関で治療を開始したら、一日でも早く回復できるよう鍼灸施療を行います。

原因は様々で、精神的なものが障害となることもあります。そのような場合でも個々の症状に合わせて鍼灸施療を行いますので、大変多くの生理痛や月経困難症でお悩みの患者さまの生活の質を高めることに役立っております。

冷え症

冷え症とは、手足の先端や腰や腹などが冷えているような感覚がある状態です。病気ではなく症状の一種で、血管の血行障害によるものです。

寒い季節や冷房の効いた室内で発症することが多いです。しもやけ、頭痛、肩こり、腰痛、関節痛、しびれ、便利や下痢などの身体的症状のほかに、不眠などの精神的症状を起こすこともあります。

《原因》

血管の収縮をコントロールしているのは自律神経ですが、自律神経の働きが何らかの原因で低下すると、血管を縮めてしまい、血行が悪くなり冷えを感じてしまいます。暖かくなってもなかなか血管が広がらず、暖かく感じるのに時間を要してしまいます。

貧血や低血圧、喫煙や運動不足などでも血行が悪くなることがあります。

筋肉量が少ないと、熱が作られにくくなり冷えを感じます。

ほかに甲状腺機能低下症レイノーなどの免疫疾患、閉塞性動脈硬化症などでも症状の一つとして現れることがあります。

《検査・診断・治療》

通常は医学的な検査はしません。病気が疑われる場合は、血液検査や画像検査が行われます。

病気が原因であれば、その治療を行います。

当治療室の取り組み

鍼灸施療は筋肉を緩め血行を促進することでカラダを温め、冷えの症状を軽減します。また、冷えにくい体質にするために、停滞している気を動かすツボを刺激して、頑固な冷え症を改善します。大変多くの患者さまに効果がみられました

鍼灸施療だけでなく、日常生活で気を付けていただきたいこともお伝えしています。

更年期障害

更年期とは、医学的には“生殖期(性成熟期)から非成熟期(老年期)へ移行する”間のことを言います。女性では、卵巣機能が衰退し消失する45歳ころから55歳ころのおよそ10年が更年期になります。40歳前半で更年期を迎える女性や50歳後半でも更年期を迎えない女性がいらっしゃるなど、個人差があります。

《原因》

主な原因は、エストロゲンの減少や性ホルモンのバランスが崩れることで起こります。

エストロゲンの減少に伴い自律神経も乱れ、加齢などの身体的、心理的、職場や人間関係などの社会的な要因も関与していると思われます。

《症状》

血管反応性の変化

のぼせ、顔のほてり(ホットフラッシュ)、発汗、動悸、疲労感、肩こり、頭痛、めまいなど

精神的症状

女性性の喪失感、母性性の喪失感、不眠、うつ症状、気分の落ち込み、イライラ、食欲低下、意欲低下骨粗しょう症など

身体的症状

頻尿、尿失禁、掻痒感、疲労感、腰痛、関節痛、筋肉痛、冷えなど

《検査・治療》

問診が中心ですが、ほかに更年期障害によく似た甲状腺疾患などが隠れていないか診断します。エストロゲンの血中濃度を調べる血液検査を行うこともあります。

治療には、飲み薬・貼り薬・塗り薬によるホルモン補充療法、漢方薬投与などがあります。

更年期障害に対する当治療室の取り組み

性ホルモンの分泌を促すツボを刺激することにより、各症状を和らげ、つらい更年期の症状に少しずつ体が慣れていくようにします。また、イライラなどの精神的症状にも応じた鍼灸施療を行うことで、心身ともにおだやかに日常生活を送れるようになります。

卵巣機能不全

卵巣機能不全とは、卵巣そのものの働きが悪い、視床下部や下垂体の機能低下により卵巣の働きが悪くなり、卵巣が正常に働かないことを言います。

卵巣には『ホルモンを合成する』ことと『成熟した卵子を排卵する』2つの機能があります。卵巣が何らかの原因で障害されると、これらの機能が働かなくなり様々な症状が出ます。

原因は、ダイエット、激しい運動、痩せ、肥満、精神的ストレス、過食、拒食、卵巣がん、がん治療によるものなどがあげられます。ほかに、先天的染色体異常、自己免疫疾患、喫煙が関与するものもあります。

《症状》

月経周期の異常、無月経、早期卵巣機能不全(早発閉経)などがあります。

《診断・治療》

問診、診察により、年齢などを考慮して検査が行われます。基礎体温を測っているのなら、排卵の有無をある程度推測できるので基礎体温表を提出します。血液検査では、ホルモン値(黄体ホルモンLH卵胞刺激ホルモンFSH、プロラクチンPRL、エストラジオールE2など)を測定します。

治療は、妊娠希望の有無により異なります。また、注意が必要な副作用などもあるので主治医とよく相談し、説明を聞いたうえで決定します。

主な治療法に、ホルモン補充療法、排卵誘発剤の投与があります。

卵巣機能不全に対する当治療室の取り組み

当治療室では、卵巣の働きを促すため、卵巣動脈を刺激し血行を促進するツボに鍼灸施療をします。同時に子宮の働きをよくするツボにも刺激を与えます。妊娠希望の有無にかかわらず、このような施療を行い本来あるべき体調にします。妊娠を希望される方で卵巣機能不全、特に早発閉経と診断された方には、鍼灸施療は大変有効です。実際、当治療室では早発閉経で妊娠の可能性が低かった方たちが、懐妊・出産されています。

黄体機能不全

黄体機能不全とは、黄体とよばれる組織から分泌されるホルモンが不十分なために、子宮内膜の状態が悪くなったりすることで引きおこる病気です。子宮内膜の状態がよくないので、受精卵の子宮内膜着床や妊娠維持の働きが悪くなり、不妊や不育の原因となることがあります。

ほかに、子宮内膜を安定させる“黄体期”が短くなるので、月経不順や不正出血も見られます。

女性のカラダは、毎月一定のサイクルでホルモンが分泌されています。黄体ホルモンはそのサイクルの一部になっています。何らかの原因で、黄体ホルモンの分泌が不十分だと不妊や不育を招くことになります。

このようなホルモンバランが乱れる原因には、急激なダイエット、ストレスが関係しています。

《診断・治療》

黄体期にプロゲステロンの分泌が正常かどうか血液検査で調べます。

ただし、黄体機能不全は必ずしも毎回起こるわけではないので、診断は難しいといわれています。

治療には、黄体賦活療法(hCGの注射)、黄体ホルモン補充療法、妊娠希望者には排卵誘発法があります。

当治療室の取り組み

卵巣の血行を促進するツボを刺激し、卵巣と黄体を活性化します。同時に子宮への血行も促し健常化します。このようにして、各ホルモンの分泌を促し通常のサイクルにしていきます。病院との併用もおすすめいたします。

逆子(骨盤位)

逆子とは、通常子宮の中の赤ちゃんは頭を下にした姿勢をとっていますが、何らかの原因で頭が下になっていない状態をいいます。骨盤位、横位ともいわれます。

妊娠中期までは、赤ちゃんの約30%は頭を上にしていますが、32週頃から頭を下にし始めます。しかし、およそ5%の割合でお尻か足が下のままでいることがあります。出産時になっても逆子のままですと、帝王切開になることがあります。逆子のままでの自然分娩は、赤ちゃんの合併症(脳性麻痺など)が多くなるので、あらかじめ帝王切開にするか決めておく必要があります。

赤ちゃんは妊娠36週頃まで子宮の中でくるくる回って動いていているので、自然に頭が下向きになることがあります。

《原因》

逆子の原因の多くは不明です。

なりやすい要因は、お母さん側と赤ちゃん側それぞれにあります。

お母さん側⇒骨盤が小さい 子宮の形が異常 前置胎盤 低置胎盤 子宮筋腫 など

赤ちゃん側⇒発育が未熟(早産) 双子など多胎妊娠 羊水過多 など

《検査・診断・治療》

超音波検査で診断します。妊娠36週頃までに頭が下になることが多く、34週くらいまで様子を見ます。

治療は、外回転術があります。これは、医師が超音波検査で赤ちゃんの頭の位置を確認しながら、お母さんのおなかを押しておなかの中の赤ちゃん回す方法です。リスクがあるため、賛否がある方法です。

当治療室の逆子の取り組み

逆子の鍼灸施療は、昔から中国で行われており、大変有効です。医療施設でも、お灸を使って逆子を治すところもあります。

当治療室では、子宮にいる赤ちゃんが動きやすい(回転しやすい)位置になるツボを使い、その後赤ちゃんが回転し通常の位置になるツボを使うことで、正常に戻します。逆子が治るだけでなく、腹部の緊張感、むくみも軽減します。

つわり(悪阻)

つわり(悪阻)とは、妊娠4週頃から始まる悪心、嘔吐、食欲不振、嗅覚の感覚亢進などの不快な症状をいいます。妊婦さんの50~80%が経験するといわれ、症状が軽い方、飲食ができない方もいらっしゃいます。12~15週頃には治まりますが、妊娠中続く妊婦さん、一度治まってまた出る妊婦さんなど症状も程度もさまざまです。

食事の量が多少減っても、赤ちゃんには影響がないとされていますが、体重が5%以上減少したときは妊娠悪阻のことがあるので、早急に医師の診察を受けます。

《原因》

妊娠による急激なホルモン量の変化ともいわれていますが、原因は明らかになっていません。精神的な要因の関与もあります。

《症状》

1.消化器症状悪心 嘔吐 食欲不振 胸やけ 下痢 便秘 など

朝起きたとき、日中、夕方、夜に症状が出る妊婦さんもいますが、一日中続く妊婦さんもいらっしゃいます。症状が強いと、脂肪を分解してエネルギーに変えるため、尿中にケトン体が出ます。尿量が少ないときは、脱水症状が考えられますので、医師に相談が必要です。

2.感受性の亢進⇒眠気 唾液がたくさん出る においに敏感 頭痛 だるさ 耳鳴り 食べ物の極端な好き嫌い

など

このほかに、食べている方が気分が良い食べづわりもあります。

3.妊娠悪阻の症状⇒栄養や水分が足りず全身状態が悪い状態

日常生活に支障が出ます。発熱、意識が薄れたり、軽い錯乱状態になったり、肝機能障害がでることもあります。適切な治療が必要です。場合によっては入院もあります。

《検査・診断・治療》

ある程度のつわりは治療の必要がなく、検査や診断は行われません。

5%以上の体重減少、脱水症状、尿中ケトン体陽性、血液検査の異常が見られるときは、妊娠悪阻と診断され、治療が必要になります。

つわりに対する当治療室の取り組み

東洋医学では、症状や体質からつわりを4つの病証に分けます

1.胃気虚タイプ⇒もともと胃が弱い 食べ物のにおいで気持ち悪くなる 悪心嘔吐で食べ物が食べられない 常に眠い など

2.胃陽虚タイプ⇒冷たいものの摂り過ぎ 胃の気の働きが弱く逆上 四肢の冷え など

3.痰飲タイプ⇒脾胃の働きが弱い 水分の摂り過ぎ 頭のふらつき めまい など

4.肝胃不和タイプ⇒ストレスによるイライラ うつ気味 げっぷ 口が苦い など

一人一人の症状に合わせ、それぞれに適したツボを刺激することで、症状を緩和します。回復は良好で、症状に悩まされることが少なくなり、徐々につわりから解放されます。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは、何らかの原因で卵巣に腫瘍の一種ができた状態をいいます。卵巣は通常直径2~3㎝ほどの大きさで、腫れたものを卵巣腫瘍と呼ぶこともあります。卵巣嚢腫の多くは、片側に発症しますが、両側に発症することもあります。

卵巣は、人体の中で一番腫瘍ができやすい臓器です。卵巣嚢腫の多くは良性の腫瘍で、急に大きくなったり転移をすることはありません。しかし、卵巣はがん化しても症状が出にくいといわれ、腫瘍が大きくなって腹部を圧迫したり、下腹部にしこりを感じて初めて受診する人も多いようです。不正出血やおりものの量が増えるといった症状もあります。

また、卵巣嚢腫は大きくなると破裂したり、卵巣の根本がねじれて血流が悪くなる茎捻転を起こすこともあります。こういう場合は、緊急手術が必要になり注意が必要です。

《原因・症状》

卵巣嚢腫の多くはそのメカニズムが解明されていません。卵巣嚢腫は種類により、原因も多岐に分かれます。チョコレート嚢腫は、子宮内膜が卵巣内に嚢胞を形成し、嚢胞内に主として月経時に出血を繰り返し、内腔に古い血液が溜まった状態ということがわかっています。

初期の時はほとんど症状がありません。大きくなると周囲の臓器を圧迫するので、腹部の張りや腰痛、外からはしこりを触れることもあります。

《診断・治療》

1.画像検査

卵巣嚢腫の疑いがある場合に、超音波検査が行われます。腹部から音波を当てる“経腹超音波検査”と膣から当てる“経腟超音波検査”があり、いずれも卵巣の大きさや何らかの病変の有無を調べます。腫瘍が発見された場合は、CTやMRIで精密検査を行います。

2.血液検査

卵巣嚢腫の多くは良性腫瘍ですが、がんなどの鑑別のために血液検査で腫瘍マーカーの検査を

行うこともあります。

腫瘍が小さく、悪性腫瘍の疑いがないときは、治療は行いません。急に大きくなった場合やなんらかの自覚症状ある場合に切除手術が行われます。妊娠を希望する人には腫瘍部分のみを切除する“卵巣嚢腫摘出術”を、妊娠を希望しない場合や腫瘍が大きい場合は卵巣卵管を切除します。子宮内膜症が原因のチョコレート嚢腫の場合は、ホルモン治療で腫瘍を小さくさせる治療がされますが、チョコレート嚢腫はがん化することもあり、注意が必要です。

卵巣嚢腫の当治療室の取り組み

卵巣嚢腫が良性であると診断された場合、卵巣の血流量を増やすツボと免疫細胞を活性化するツボを刺激します。免疫細胞の働きの活性化により、腫瘍を吸収し、腫瘍の形成を抑制します。腫瘍が小さくなり、自然妊娠される方も多くいらっしゃいます。

チョコレート嚢腫

チョコレート嚢腫とは、子宮内膜が卵巣内に嚢胞を形成し、月経時に内腔に古い血液が溜まり、卵巣が肥大化した状態です。20代~30代に多く見られます。

《原因・症状》

本来、子宮内面にある組織が何らかの原因で卵巣に移り、月経と同じ周期で増殖し出血します。しかし、卵巣内にできた内膜は出血できず、卵巣内にたまっていきます。たまった血液は黒褐色を呈するので、チョコレート嚢腫と呼ばれます。チョコレート嚢腫は卵巣の片側もしくは両側に発生することがあります。

症状は、月経痛、骨盤痛、性交痛、下腹部痛、排便痛などです。チョコレート嚢腫は不妊症の原因となることがあり、不妊治療で発見されることもあります。

《検査・診断・治療》

チョコレート嚢腫の診断には、卵巣種大の確認が必要で、内診と経腟超音波検査が行われます。卵巣嚢腫との区別が難しいとき、手術が検討されるとき、卵巣がんがどうか判断するときにはMRI検査が追加されることもあります。

治療は、病状、病変の部位、妊娠の希望の有無などで総合的に考慮し選択されます。

1.薬物療法

小さいチョコレート嚢腫に対しては、主にホルモン剤が使用されます。薬により特有の副作用があるので、十分に説明を受けることが重要です。

2.手術療法

一定の大きさになると、卵巣摘出、嚢胞摘出、嚢胞焼灼術などの手術療法になります。妊娠を希望する場合は嚢胞摘出術が行われます。

チョコレート嚢腫に対する当治療室の取り組み

チョコレート嚢腫の原因が多岐にわたるため、それに応じ患者さまお一人お一人に合わせた鍼灸施療を行います。チョコレート嚢腫の消失または縮小を目的としています。そのため自然妊娠される患者さまも多くいらっしゃいます。

子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮の壁(筋組織)にできた良性の腫瘍のことです。30代以降の女性の30~40%にみられ、そのうち悪性化(がん化)するのは0.5%以下といわれています。

子宮筋腫は、発生する部位により漿膜下筋腫(子宮の外側で発生。子宮筋腫特有の症状が少ない)、筋層内筋腫(筋層内に発生し最も多い種類)、粘膜下筋腫(子宮内腔に向かい大きくなる。月経痛などの症状強い)があります。

《原因・症状》

子宮筋腫が発生するメカニズムはまだ解明されていませんが、遺伝子が関係するともいわれています。女性ホルモンのエストロゲンが関係していることはわかっています。閉経後は大きくなることはなく、むしろ小さくなることが多いです。

症状は、月経過多・生理痛・不正出血・月経時以外の痛み・下腹部の圧迫・腰痛・周辺の臓器への圧迫に伴う症状(頻尿・排尿痛・尿閉・便秘)などがあります。

不妊症や流産・早産の原因にもなります。

《検査・診断・治療》

子宮筋腫の検査診断は主に以下の通りです。

1.内診

一定以上の大きさであれば、内診で発見できる

2.経腟超音波検査

内診ではわからない小さな筋腫を発見でき、部位や大きさも測定できる

3.血液検査

貧血の有無を調べる

4.MRI検査

手術を前提の場合、悪性の子宮肉腫などと区別がつきにくい場合に診断を確定するため

治療は、特に症状がなければ特別な治療はせず、定期的に経過を観察するのが一般的です。しかし、何らかの症状がある場合は以下の治療が行われます。

1.手術

年齢や大きさ・数により異なり、術後に妊娠を希望する場合は筋腫のみを切除します。妊娠の予定がない場合や筋腫がたくさんある場合は、子宮を摘出する手術が行われます。ほかに、筋腫に栄養を送る血管を閉塞させ筋腫を小さくさせる方法(子宮動脈塞栓術)、超音波を筋腫に当てて縮小させる方法(集束超音波療法)などがあります。

2.薬物療法

エストロゲンを減少筋腫を小さくさせるため、エストロゲンの分泌を抑制するホルモン療法がありますが、長期にわたる治療は骨粗しょう症などのリスクがあり、あまり推奨されません。

子宮筋腫に対する当治療室での取り組み

子宮筋腫は、特別な症状がない場合は保存療法が一般的です。しかし、生理痛・月経過多など不快な症状が出ることがあり、その場合は薬によって症状を緩和させますが、薬に頼らずに症状を緩和させる方法が鍼灸施療です。

鍼灸施療では同時に、筋腫が大きくなることや増えることを抑え、圧迫症状がなくなることで頻尿や排尿痛、便秘などが大幅に改善され、患者さまの生活の質の向上に役立っています

神経系のお悩み

緊張性(緊張型)頭痛

⚠️急に起こった頭痛で、これまで経験したことのないひどい痛み、短時間でピークに達する痛み、発熱、手足に麻痺やしびれがある場合は、至急、脳神経内科 脳神経外科を受診してください。また数週間のうちに痛みが悪化する場合も医療機関の受診をお勧めします

緊張性(緊張型)頭痛とは、頭全体が締め付けられたように頭が痛む頭痛です。長時間での同じまたは無理な姿勢の作業による首肩の凝り、パソコンやスマホの使用、精神的肉体的ストレス、眼精疲労などが引き金となり、頭痛が発症すると考えられています。

《症状・特徴》

1.左右両側に圧迫感、締め付け感。数十分から数日間続く。

2.痛みの程度は軽度~中程度で、なんとか日常生活は送れる。

3.中高年に多く、男性より女性に多い。

4.首や肩こり、めまいを伴うこともある。偏頭痛のようなひどい吐き気、嘔吐はない。

5.動いても悪化することはない。

《検査・診断・治療》

頻度が少なく、鎮痛薬が有効であれば、検査は行われません。脳腫瘍や頸椎疾患などの二次性頭痛が疑われる場合は、画像検査・血液検査が行われます。鎮痛薬を飲みすぎる(3日以上)と頭痛がさらに悪化することがあるので、週に1~2日程度にとどめましょう。

生活習慣を見直すことも必要です。精神的ストレスは、余暇の時間に発散・解消できるようにしましょう。コリや目の疲れなどの身体的ストレスは、長時間同じ姿勢をとらないようにし、適宜休憩をとって遠くを見たり、ストレッチやマッサージをします。コリや目の疲れ・頭痛を感じてからではなく、感じる前に行うことがポイントです。ぬるま湯につかるのもよいです。

緊張性(緊張型)頭痛に対する当治療室の取り組み

西洋医学では、鎮痛薬の服用で症状を緩和させますが、鎮痛薬の使用過多により頭痛を悪化させることが懸念され、実際当治療室にお越しになる患者さまにも使用過多による頭痛とみられるものが多々あります。

鍼灸施療は、患者さまの状態や体質を見て、ひとりひとりに合わせた施術を行うことでつらい症状を緩和させるので、鎮痛薬の使用量を減量させることができます。最終的には使用しなくても日常生活が送れるようになります。ぜひ、緊張性(緊張型)頭痛に鍼灸施療を取り入れていただくことをお勧めいたします。

偏頭痛(片頭痛)

⚠️急に起こった頭痛で、これまで経験したことのないひどい痛み、短時間でピークに達する痛み、発熱、手足に麻痺やしびれがある場合は、至急、脳神経内科 脳神経外科を受診してください。また数週間のうちに痛みが悪化する場合も医療機関の受診をお勧めします

偏頭痛(片頭痛)とは、頭の片側または両側にこめかみから目にかけて、ズキンズキンと拍動するように起こる頭痛のことです。吐き気や嘔吐を伴い、光や音に過敏になることもあり、日常生活に支障をきたします。成人の8.4%が片頭痛にかかっているといわれ、女性は男性の4倍、20代~40代に多く見られます。

原因・症状》

原因はすべて解明されていませんが、何らかのきっかけで脳の血管が拡張し、痛みを発症すると考えられています。きっかけとなるものは様々で、ストレス、寝すぎや寝不足、月経周期などの女性ホルモンの変化、気候・気圧の変化、アルコール、光や音からの誘作、チョコレートや化学調味料の食物などがあります。

症状は、

1.ズキンズキンと拍動する痛みが多い

2.月に平均2~6回起こり、発作後は体調に問題がない

3.6割の人は片側に痛みが起こる

4.動くと痛みが増し、じっとしていると楽になる

5.頭痛がひどいと吐き気・嘔吐を伴う

6.1~2割の人に頭痛発作の前兆がある。キラキラ・ギザギザした光が出現し(閃輝暗点)、20~30分持続した後頭痛が起こるが、60分超えての前兆はあまりない。

7.発作の頻度は月に1~2回の人もいれば、週に3~4回の人もいる。

《検査・診断・治療

体温や血圧などのバイタルや神経学的診察と必要に応じて画像検査を行うことがあります。頭痛発作が起こった時の痛み方、持続時間、吐き気や嘔吐の有無、光や音の敏感さなども調べます。頭痛が起こったら、服薬した量も含めてメモを取るようにし、医師に伝えましょう。

頻度が少なく、鎮痛薬で症状が改善されれば市販薬を服用します。服用しても日常生活に支障が起こる場合は、医療機関にて適切な薬を処方してもらいます。ただし、月に10日以上の服用では使用過多による頭痛が起こる可能性があり、注意が必要になります。

偏頭痛(片頭痛)に対する当治療室の取り組み

西洋医学では薬による対処療法がおこなわれますが、使用過多による頭痛も懸念されます。鍼灸施療は、患者さまの状態や体質を見て、ひとりひとりに合わせた施術を行うことでつらい症状を緩和させるので、鎮痛薬の使用量を減量させることができます。また、偏頭痛の発作が起こりにくい体質になることも可能です。ぜひ、偏頭痛(片頭痛)に鍼灸施療を取り入れていただくことをお勧めいたします。

自律神経失調症

自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経とで構成された自律神経が、互いに関連しながら生体内でバランスをとっていますが、このバランスが崩れることで起こる種々の症状を言います。自律神経失調症という病名は医学的に正式なものではなく、原因がわかればその病名が付きます。

症状は様々で、身体的症状としては倦怠感、睡眠障害、頭痛、動悸、吐き気、めまいなど、精神的症状としてはイライラ、不安感などがありますが、診察しても異常が診られない、精神的な疾患も診られないと自律神経失調症と診断されることがあります。

《原因・症状》

自律神経は、活発に体を動かすときに働く交感神経と、リラックスするときに働く副交感神経から成り立っています。私たちはふだん、日中に交感神経が働くおかげで活発に活動できますが、ずっと活動し続けると疲労してしまいます。しかし、夜に副交感神経が働き休むことで回復し、翌日活発に活動できます。このように交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで、健康に過ごすことができます。

しかし、ストレスやホルモンバランスの乱れにより、どちらかが過剰に興奮した状態が続くと様々な不調がでます。

症状は実に多岐にわたります。

症状があちらこちらに出たり、消えたりすることもあります。

身体的症状では…めまい、ふらつき、動悸、息切れ、倦怠感、疲労感、手足の冷え、発汗、頭痛、頭重、不眠、食欲不振、胃痛、肩こり、背中の痛み、腰痛、腹痛、下痢、便秘、冷や汗、ふるえ、血圧の変動、耳鳴り、過呼吸など

精神的症状では…情緒不安定、不安感、人間不信、イライラ、抑うつなど

《検査・診断・治療》

検査によりほかの病気が見つかればその治療を行います。検査をしてもほかに異常が見られず、ストレスや生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの乱れがあれば、この病気を疑います。

症状の訴えを重視し、診断します。

治療は、軽い運動や入浴などで体をほぐし、リラックスできる楽しいものや心地よい時間を設けることなどを指導します。規則正しい生活を送り、睡眠不足、運動不足にならないようにします。

痛みに対する鎮痛薬や不眠に対する睡眠薬など、対処的に薬が処方されることもあります。

当治療室の取り組み

1979年WHO(世界保健機関)は鍼灸施療の適応疾患43疾患を発表し、自律神経失調症もその中に含まれています。また、米国国立衛生研究所も、これら適応疾患はその科学的根拠、西洋医学の代替医療としての効果について有効であると発表しました。このように中国や欧米では、自律神経失調症に対する鍼灸施療の有効性が再認識されています。

原因が不明で症状が多岐にわたり、その症状一つ一つに対処する西洋医学とは異なり、東洋医学ではお一人お一人の体質を見極めアプローチすることで、様々は症状を軽減していきます。

睡眠障害(不眠症)

不眠症(睡眠障害)とは、寝つきが悪い、眠りを維持できない、予定より早く目が覚める、眠りが浅い、十分に寝た感じがしないといった症状が続き、日中の眠気、注意力の散漫などのため仕事や学業に支障をきたすなど、日常の生活に障害が生じた状態のことを言います。

《原因・症状》

原因として 

1.身体的要因 痛み、かゆみ、発熱、喘息、頻尿、むずむず脚症候群睡眠時無呼吸症候群、パーキンソン病などの疾患の他、年齢も関係

2.環境的要因 環境の変化、騒音、温度、湿度、明るさ、時差、夜勤勤務、スマホなどの使用 など

3.心理的精神的要因 悩み、不安、イライラ、極度の緊張、近しい人物の死など

4.薬理学的要因 アルコール、喫煙、カフェイン、薬の副作用 など

があります。

症状は

1.入眠困難 布団に入っても30分~1時間以上眠りにつけない 最も多い

2.中途覚醒 眠ってから起床するまで何度も目が覚める 高齢者に多いタイプ

3.早期覚醒 起床時間より2時間以上早く目が覚め、以降眠れない 年齢とともに生じる

4.熟眠障害 眠りが浅く、十分寝ても熟眠感を得られない

があります。

《検査・診断・治療》

むずむず脚症候群や睡眠時無呼吸症候群や痛みなどの身体的要因がある場合は、そちらの治療を行います。基本的には、症状や日常生活の支障度合などの問診を行い判断しますが、夜間睡眠の状態を調べる「睡眠ポリグラフ検査」、連続的に活動量を測定する「アンチグラフィ」という検査を行うこともあります。

治療は不眠症状の原因に対して、睡眠衛生を基本とした生活習慣の見直し、ほかに薬物療法や認知行動療法も併せて行われることもあります。

☆睡眠衛生の基本☆

1.朝日を浴びて体内時計をリセット 

2.昼は光を浴びて活動 

3.夜は暗い所で過ごす(パソコン・スマホの使用禁止)

4.規則的な食事を摂る(できるだけ3食とって内臓も時計リセット)

休日もなるべく平日を同じように過ごしましょう。多く眠りたいときは1時間程度にしましょう。カフェインやアルコールの過度な摂取は良質は睡眠を妨げるので注意しましょう。寝る前のゲーム・スマホ・パソコン・テレビは禁止、軽いストレッチおすすめです

不眠症に対する当治療室の取り組み

1979年WHO(世界保健機関)は鍼灸施療の適応疾患43疾患を発表し、不眠もその中に含まれています。また、米国国立衛生研究所も、これら適応疾患はその科学的根拠、西洋医学の代替医療としての効果について有効であると発表しました。このように中国や欧米では、不眠症に対する鍼灸施療の有効性が再認識されています。

不眠症の原因は多岐にわたりますが、東洋医学ではお一人お一人の体質を見極めアプローチすることで、緊張した体をほぐし、東洋医学特有の考え「気」を正しく巡らせることで眠りに導きます治療後は家での休養をお願いしています。

めまい(眩暈 げんうん)

めまい(眩暈)とは、目が回る、クラクラするといった症状のことを言います。眩は目の前が暗くなること、暈は物がぐるぐる回って見えたり、物が揺れて見えたりすることを言います。

めまいを引き起こす病気はさまざまで、緊急性を要したり、受診する診療科目が異なります。

緊急性を要するのは、急に起こる激しい頭痛や手足の麻痺・しびれ・吐き気・嘔吐・胸痛などが生じた場合です。

《原因・症状》

体の平衡感覚や位置の認識は、脳、耳、循環器、首などが統合されて行われています。そのため、これらに不統合(異常)が生じた場合にめまいが起こります。

◇脳が原因の場合

脳梗塞脳出血くも膜下出血脳腫瘍などが考えられます。

◇耳が原因の場合

耳の奥にある鼓膜の奥には、平衡感覚を司る神経や器官があります。耳に異常があると、めまいが起こります。良性発作性頭位めまい症、メニエール病前庭神経炎などが考えられます。

◇首が原因の場合

筋緊張性頭痛、頚椎椎間板ヘルニアなどが考えられます。

◇その他

高血圧や低血圧、薬の副作用、加齢が原因となることもあります。

症状としては、

自分や天井がぐるぐる回っている…脳出血、脳梗塞、突発性難聴、中耳炎、メニエール病 

ふわふわ浮いてる感じ…中枢神経、高血圧 

立ち眩み、失神…起立性低血圧、アダムス・トークス発作

があります。ほかに、聴力の低下、耳鳴り、吐き気、嘔吐、頭痛などがあります。

《検査・診断・治療》

検査は詳細な問診と身体診察と、考えられる原因から、血圧測定、頭部や頚部CT、頭部MRI、血液検査、心電図などが行われます。

治療は原因疾患に応じて行われます。

当治療室での取り組み

めまいの原因の治療と併用して、めまいの症状を軽減する治療を行います。ですので、まずは医療機関にて原因を調べていただきます。病院での治療と並行して(経過観察を含む)、原因に対する鍼灸施療とめまいの症状を軽減する鍼灸施療を行います。

運動器の疾患

肩こり

肩こりとは、首から肩、背中にかけて筋肉のこわばったような不快感、コリ、痛み、重だるさなどを感じる症状のことです。肩こり自体は症状のことをいい、病名ではありません。肩こりの原因には、日常生活から考えられる原因と疾患が原因の2つのパターンがあります。

《原因》

日常生活から考えられる原因

・長時間での同じ姿勢・悪い姿勢・眼精疲労・運動不足・冷え・ストレス・過労・不眠・なで肩の人・華奢な人・猫背 など

肩こりの原因と考えられる原因

・四十肩五十肩・変形性頚椎症・更年期障害・高血圧症・低血圧症・狭心症・心筋梗塞・偏頭痛・肝臓疾患・副鼻腔炎・顎関節症・うつ病 など 疾患が心配な場合は早めに医療機関に受診しましょう

《検査・診断・治療》

肩などのつらいと感じる部位を触診します。硬結・圧痛・筋緊張があります。頚椎椎間板ヘルニアなどがないか、X線やCTで検査することもあります。

治療は、外用鎮痛消炎製剤の貼り薬、ビタミン剤、筋肉の緊張を緩める薬などの薬物療法、理学療法、神経ブロック注射などが行われます。

《日常生活での対処法》

・日ごろから意識して、正しい姿勢を保持

・同じ姿勢を続けず、時々首・肩・背中・腰などをストレッチ

・軽い体操やウォーキング

・パソコンなどの画面の見過ぎに注意

・ストレスを感じる場合は軽い運動や趣味などで発散、イライラや怒りを人に聞いていもらう など

当治療室の取り組み

東洋医学では、肩こりは気血の流れが滞っているため起こるものと考えます。実際、肩こりは肩の血行不良により起こっています。この気血の通り道である経絡の流れをよくすることで、肩こりの症状を緩和するだけでなく、全身の緊張もゆるめ、さらに続けることで肩こりが起きにくい状態になります。

いわゆる腰痛

⚠️転倒などでの強い痛み、お尻足の痛みやしびれ血尿や排尿痛があるときは、すぐに医療機関に受診しましょう

今や「腰痛」は国民病といえます。以前は中高年に多い症状でしたが、いまは小学生でも腰痛を訴えることが珍しくなくなっています。運動不足、過度の運動、間違った筋トレやストレッチ、悪い姿勢での座位や歩行、重い荷物の運搬などが原因となっているようです。

腰痛には「原因が特定でき手術が必要となるかもしれない」ものが10~15%、「原因が特定しずらく手術も必要ない」ものが85~90%というデータがあります。一般的に腰痛というのは、後者のことを言います。

《腰痛のタイプ》

上記の「特定しずらく手術も必要ない」腰痛のタイプをみてみましょう。

1.筋性腰痛(10%)

筋肉の使い過ぎや酷使して起こる腰痛です。運搬業などの肉体労働、座ったままのデスクワークに多く見られます。痛みを感じる場所をほぐすと軽快します。

2.前屈腰痛(40%)

前かがみになったとき椎間板が圧迫されて痛みます。猫背の人に多く見られます。ほぐしても軽快しません。

3.のけぞり腰痛(40%)

洗濯物を干す、高いところのものを取ろうとするなどの動作の時に、背骨の後ろの椎間関節が当たって痛みが生じます。腹筋が弱いことが関係しています。ほぐしても軽快はしません。

4.臀部痛(10%)

お尻の痛みです。腰骨の真下でお尻にある仙骨近辺の筋肉が痛みます。妊娠・出産に関係するので、圧倒的に女性が多いです。

《原因と対処法》

1.加齢

加齢とともに筋肉量が減少するため、腰が重だるく感じます。重だるく感じるので、座ったまま横になったままでいると、腰部の血行が悪くなり、重だるく感じるので…といった負のスパイラルに陥りがちです。入浴後やカイロなどで腰を温めると楽に感じるのは、血行がよくなるためです。

対処法として、痛みの少ないときに軽くウォーキングをしてみます。動くと血行がよくなるので、痛みが軽く感じると思います。杖をついている人は、少しでいいので背すじを伸ばし、視線を前にし、歩きます。無理をせずに行いましょう。また、座るときの姿勢にも気を付け、重いものは持たないようにしましょう。

2.運動不足・肥満

運動不足になると、筋肉量が減り腰椎に負担がかかります。肥満も腰椎に負担がかかり、腰痛を引き起こしやすくなります。

対処法として、筋トレ、ウォーキング、ヨガ、ストレッチをして、血流をよくし、肥満を解消します。なお、間違った筋トレやストレッチは腰痛を悪化させることがあるので注意が必要です。水中ウォーキングはけがが少なく、効果が高いといわれています。どちらも、痛みの少ないときに様子を見ながら行いましょう。

3.悪い姿勢

合わない靴を履いての歩行、キャリーケースをひいて左右アンバランスな状態の歩行などもよい姿勢とは言えず、腰に大きな負担がかかります。悪い姿勢が癖にならないよう、普段から気を付けます。正しい歩行ができる靴を履く、キャリーケースは左右バランスよく持ち替えるなどし、意識的に胸を張り、腰を伸ばし、良い姿勢を心がけましょう。

4.長い時間での同じ姿勢

デスクワークや運転など長時間座る方は時々立ったり歩いたり、立ち続けるお仕事の方は前屈などで腰から下のストレッチをしましょう。

《検査・診断》

X線、MRI検査、CT検査の画像検査を行い、腰痛以外の疾患が見られない時は腰痛となります。

当治療室の取り組み

患者さまの状態により異なりますが、腰部やその近辺の経穴(ツボ)を使い、腰部への血行を促進し、損傷した筋肉組織の修復させます。また、痛みを感じる脳への信号を遮断するので、鎮痛効果も期待できます。

原因が特定されないいわゆる腰痛の方も、特定されているが手術の必要がないと診断された方も、鍼灸施療は有効ですのでお勧めいたします。痛みのために「起き上がるのが怖い」「以前のような歩行はしないようにしている」といった理由で、長期間にわたり大事にしすぎますと、腹筋や歩行に必要な下肢の筋肉が弱ってしまいます。まずは鍼灸施療で痛みを緩和し、少しずつ起き上がって歩行を始めましょう!

ぎっくり腰(急性腰痛症)

ぎっくり腰(急性腰痛症)とは、重い物を持ち上げたときや上体をひねったときに突然痛みが生じる腰痛のことです。骨折や感染症、腫瘍などが原因でも起こることがあり、その場合はそれぞれに対応した治療が必要になります。内臓疾患によるものでなく、レントゲンを撮っても脊椎の異常が診られない時をぎっくり腰といいます。

《原因》

ぎっくり腰の主な原因は

・不用意に体をひねった

・重いものを持ち上げた

・前傾姿勢をとった

・長時間の同じ姿勢

・無理な姿勢

・筋肉疲労

・月経時

・運動不足

・肥満

・老化

などの他、原因がはっきりしないこともあります。椅子に長時間座るデスクワーカー、ドライバーなどに多く、座ったままの姿勢は体重が腰にかかり、血行が悪いために椎間板に負担がかかり、神経が圧迫されて痛みが出ます。腰や骨盤の筋肉、筋膜、靭帯も損傷しやすく、やがてぎっくり腰になります。画像検により椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症、脊椎分離症、脊椎すべり症、圧迫骨折などの脊椎の異常が診られたときは、その治療を行います。

痛みが、臀部(お尻)・太ももの後面・ふくらはぎにある場合は仙腸関節、腰・脚全体にある場合は腰椎が損傷し、背中や腰の筋肉・筋膜が痛むときは筋肉・筋膜の損傷と考えられます。

《診断・治療》

問診・身体検査で、重要な病気が隠れていないか評価し、必要に応じて画像検査・血液検査・尿検査・骨密度検査などが行われます。内臓疾患がなく、画像検査で異常が診られない場合はぎっくり腰の診断になります。

治療は安静にし、自然治癒力で3週間から3か月以内に自然に治ることが多いです。湿布を貼ると患部の痛みが軽くなりますが、続けて何日も貼ると逆に治りが悪くなることがあります。また、完治する前に体を動かすと慢性化したり、再びぎっくり腰を起こすことがあります。コルセットの着用も有効ですが、長期間の使用は腹筋などの筋肉を弱め、腰痛になりやすくなるので注意が必要です。

当治療室の取り組み

3週間以上安静にすることでぎっくり腰の痛みは緩和できますが、長期間の安静は仕事上できなかったり、痛みなどの不快感もあったりして、案外難しいものです。また、高齢者ですとぎっくり腰を引き金に半寝たきり、寝たきりになることも多く、1日でも早く回復することが望まれます。

ぎっくり腰の症状の緩和には、鍼灸施療が一番です。

なぜなら、鍼灸施療には

・損傷部位の痛覚の信号の伝達を遮断

・脳の痛みの伝達と感受を抑制

・脳の鎮痛効果のあるエンドルフィンを増やす 

などの働きがあるため、ぎっくり腰に対してとても有効は施術なのです。痛みが治まれば、2回目3回目の施術で、痛みで緊張しこわばった筋肉を緩めるので、早く日常生活に戻ることができます。ぎっくり腰を発症した1~3日目は激痛ですので自宅で安静か、鍼灸施療の往診での施療になります。3,4日以降どうにか歩けるようになりましたら、正しくコルセットを着用して当治療室のお越しください。

消化器系疾患お悩み

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、胃から胃酸が逆流し、その酸のために食道の粘膜を刺激し、傷めることで起こる炎症のことです。食道と胃の境目には“下部食道括約筋”という筋肉があり、胃に流れ込んだ食物が食道へ逆流しないよう、食物が胃に入る以外はきつく閉じられています。しかし、この下部食道括約筋が緩むと、胃の中にある食物が胃酸とともに逆流し、食道を傷めてしまいます。

《原因》

1.下部食道括約筋の働きの低下

加齢や喫煙などで括約筋の働きが低下することがあります。また、食道裂孔ヘルニアや胃の手術でも、一時的に括約筋の働きが低下することもあります。

2.食道や胃の蠕動運動の低下

食道に逆流した胃酸が長く食道内とどまったり、胃炎や胃潰瘍などで胃の蠕動が弱まり食物が長く胃の中にとどまると起こりやすくなります。

3.腹圧の上昇 

妊娠、肥満、便秘、腹筋のトレーニング、重いものをもつなどで、おなかを締め付けたり、胃を圧迫したりすると起こりやすくなります。

4.胃液の分泌増加 

ストレス、食べ過ぎ・飲み過ぎ などで胃液の分泌が多くなると、逆流が起こったときに食道を傷めやすくなります。

《症状・検査》

症状は、胸やけ、呑酸、喉の痛み・違和感・不快感、胸痛、声枯れ、耳の違和感、嘔吐、食道上部のつかえ感、胃部不快感、激しい胸の痛み など就寝前、起床時、前かがみになった時、横になった時などに自覚症状を訴える。

検査は、内視鏡検査のほか、画像検査が行われることがあります。

《治療》

基本的には、胃酸の分泌を抑える薬や胃の働きを促す薬を使った薬物療法が行われます。早食いや食べ過ぎをやめ、脂っこし食事を減らし、食後すぐに横にならないようにするといった、日常生活の見直しも必要です。

食道裂孔ヘルニアが重度な場合は、手術が行われることがあります。

当治療室での取り組み

患者さまのお話を伺ったうえで、東洋医学の観点から原因を探ります。食道括約筋を刺激するツボ(経穴)の他に、逆流性食道炎が「精神的ストレス」「暴飲暴食」「風邪などの発熱後の発症」「薬の服用」「冷たいものの飲食」などの要因で起これば、それぞれに対応したツボ(経穴)を使って施療します。病院の薬で症状が治まるが繰り返す場合は、鍼灸施療をお勧めいたします。

便秘

便秘とは、便が十分に出ない、便が出きらない感じがする(残便感)、便が出ずらい(排便困難)などのことを言います。定義もいろいろあり、

日本内科学会「3日以上排便がない状態」

日本消化器病学会「本来体外に排出すべき便を十分量かつ快適に排便できない状態」

としています。

20~60歳までは女性が多く、60歳以降は男女差はみられません。高齢になるに従い発症しやすい傾向にあります。

《原因》

便秘は大腸の異常の原因により、2つのタイプに分かれます。

1.機能性便秘 大腸の形に異常はないが腸の機能低下による便秘

さらに次の2つのタイプに分類されます。

①排便回数減少型(排便回数と量の減少、腹部膨満感や腹痛、便の硬化がみられる)

・大腸通過遅延型…大腸が糞便を輸送する能力が低下しているために起こる便秘。大腸の動きが悪い、大腸の蠕動運動の低下、運動不足が主な原因

・大腸通過正常型…腸が糞便を輸送する能力は正常。小食、ダイエットの食事制限が主な原因

②排便困難型(便が十分かつ快適に排便できない)

・大腸通過正常型…硬便のために排便困難やいきみを生じる。水分摂取量の不足や大腸の過剰な水分吸収が主な原因。

・機能性便排出障害…機能的な病態により、便を十分かつ快適に排出できないために、排便困難や残便感を生じる。便意の我慢の習慣化が主な原因。

2.器質性便秘 何らかの原因で腸の形の変化による便秘

大きな病気が原因であることがあります。次の項目が当てはまる場合は、すぐに医師に相談することをおすすめします。

・急に便秘になった・急に便秘や下痢の両方になった・便秘の治療をしても改善しない・発熱、吐き気、嘔吐があった・急な体重減少・貧血・血便・腹部膨満感・家族に大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎など腸疾患の既往歴がある

上記以外に、病気が原因や薬の影響によって便秘になることがあります。気になることがあれば、主治医に相談しましょう。

《症状・検査・治療》

症状としては、腹痛、膨満感(お腹の張り)、便が硬いことによる排便困難やいきみ、残便感、吐き気、食欲不振 などで、回数のみではありません。

検査は、大腸内視鏡検査、注腸造影検査、排便造影検査、腹部X線CT検査、血液検査などが行われ、診断がつきます。

治療は、刺激性下剤、非刺激性下剤が処方されます。後者を内服するのが原則で、前者は一時的な頓服として使用されます。

また、便秘症と診断された場合は、次のことを心がけましょう。

1.運動・マッサージ

腹筋が衰えると便をスムースに押し出す力が弱くなります。日常的に運動を取り入れましょう。ウォーキングは、ジョギング、水泳、ヨガなどの全身運動を。特に高齢者におすすめします。

マッサージは、仰向けに寝て、両手を重ねおへそから下→右→上→へその上→左→下と「の」の字を書くようにゆっくりさすります。30回くらい行いましょう。

2.食べ物

食物繊維や発酵食品など意識して摂るようにしましょう。水分もこまめに摂りましょう。特に朝、コップ一杯の白湯または水を飲むと、腸が目覚め、活発に動き出します

極端なダイエットはNG!バランスの良い食事を心がけ、3食をなるべく同じ時間に摂るようにし、腸のリズムを整えましょう。

3.薬

便秘薬を日常的に使い続けると、腸の動きを悪くすることがあり、便秘薬なしで排便することができなくなることがあり注意が必要です。医師や薬剤師に相談し、お薬を見直しましょう。

当治療室の取り組み

患者さまのお話を伺ったうえで、東洋医学の観点から原因を探ります。「お腹が張って苦しいのかどうか」「腹痛の有無」「ガスがでるかどうか」「便の状態」「お小水の状態」「精神的ストレス」「暴飲暴食・飲酒」「旅行など環境が変わった」「体の冷え」「偏食の有無」「既往歴」などをお聞きし、舌・背中・お腹・脈を診て、患者さまの体質を判断いたします。体質に合わせたツボ(経穴)を使って、大腸が活発に動くように対応していきます。同時に大脳に作用し、排便反射によって便意を促進し、症状を改善します。その結果、便秘の患者さまの多くが、症状が軽快または改善し、快適な日常生活を送っていらっしゃいます。

眼科疾患系のお悩み

眼精疲労

眼精疲労とは、目を使う仕事を続けることで目の痛み、目のかすみ、充血や肩こり、頭痛などが起こり、休養しても十分に回復できない重度の状態です。パソコンの使用、初期の老眼、白内障などでも起こります。

《原因》

1.目に原因 

近視・遠視・乱視・老眼・白内障などが原因のことが多いです。適正な検査をして、目にあった眼鏡を使用することで症状が緩和することがあります。

2.左右の視力差 

左右の視力の差が大きいと眼精疲労が起こる場合があります。コンタクトレンズを使用すると緩和されることがあります。

3.その他の原因

逆さまつ毛、結膜炎、高血圧、貧血、自律神経失調症、心身症など

4.環境的な原因

パソコンやスマホなどデジタルデバイスの長時間の使用を原因とする眼精疲労は現在では圧倒的に多いです。紫外線・赤外線・ブルーレイなどの過度の照射による光刺激が原因です。VDT症候群と呼ばれています。

《症状》

かすみ目、疲れ目、目の痛み、まぶしさ、目の充血、まれに色の区別がつきにくいといった症状も現れます。

《検査・診断・治療》

自覚症状が重要な所見となります。従事状況や日常生活などの詳細な問診が行われ、視力検査・眼圧測定・屈折検査なども行われることがあります。既往歴・内服歴が重要なポイントとなることもあります。

治療として、適正に検査し処方された眼鏡やコンタクトレンズを使用しての視力矯正や、適宜休養を取り目を酷使しない、照明を変える、姿勢を正すなどの自己療法を行います。薬物療法としてビタミン12などの点眼薬や近赤外線照射療法といったものもあります。

当治療室の取り組み

眼精疲労は休養を取っても、回復できない状態です。このような状態が続くと、疲労が蓄積され治りづらくなってしまいます。視力矯正や環境を変えたり、点眼薬による対処療法はもちろんですが、鍼灸施療を行い自然治癒力を引き出すことで、早く回復することが期待できます。鍼灸施療では、目の奥の視細胞などを活性化させる経穴(ツボ)を使うことで眼精疲労の症状を緩和し、肩こりがある方は肩こりの症状も緩和できます。

☆眼精疲労に効果のあるツボ

次のツボを親指または人差し指でゆっくり押します。上清明・承泣は眼球ではなく、骨の際を押します。

代謝・分泌系のお悩み

ダイエット(耳はり療法)

耳はり療法とは、耳にある内臓や自律神経の働きを助けるツボを刺激し、カラダの不調を取り除き、痛みやコリを楽にする施療のことです。耳のツボは、紀元前4~2世紀頃から知られていました。

《肥満とは

食欲は、脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢により調整されています。胃が空っぽになり、胃が収縮し、お腹が鳴ったら摂食中枢が働いて食欲がわきます。食事をし、胃が食べ物で満たされ拡張したり、食べ物が消化され血液中のブドウ糖濃度が高くなると満腹中枢に働きかけ、摂食を抑えます。肥満の方にしばしばみられる、まとめ食いややけ食いは、この満腹中枢の働きが低下したためといわれています。

まとめ食いややけ食いなどの食べ過ぎの状態が続くと、肥満を引き起こしやすくなります。肥満であることで、息切れ、動きにくいなどの症状が起こり、高血圧糖尿病脂質異常症が誘発される危険性があります。また、肥満をきっかけに睡眠時無呼吸症候群が起こることもあり、これにより高血圧などの健康被害が生じます。

当治療室のダイエットに対する耳はり療法

近年、減量による空腹感のストレスを軽減する機能が医学的に明らかになってきました。

耳の経穴(ツボ)を効果的に刺激することで、空腹感から生じるストレスを軽減させ、ダイエットをサポートします。ただ、この方法は耳のツボを刺激して痩せるということではありません。食事の減量による空腹感のストレスを軽減させることを目的としています。

また、患者さまの年齢や体質から、全身調整のはりもいたしします。これにより、滞っていた気血の流れをよくし、本来排出されるべきものを排出し、入るべきものを取り入れることで代謝を上げていきます。全身調整のはりで代謝を上げ、むくみなどを解消し、耳のはりで減量による空腹のストレスを軽減し食べ過ぎを抑えるので、健康的にダイエットをすることができます。

当治療室では、よくある金属製の粒や耳つぼジュエリーではなく、円皮鍼という長さ3mm、太さ0.12mmの小さな鍼を使用します。それを刺入することでツボに刺激を伝えるので、確実に効果を得られます。金属製の粒や耳つぼジュエリーでダイエットの効果を得られなかった方は、ぜひ当治療室の耳はり療法をお試しください

耳鼻咽喉・口腔系のお悩み

花粉症

花粉症とは、植物の花粉が原因で生じる季節性アレルギー性疾患です。主に鼻の症状がでるアレルギー性鼻炎、目の症状が出るアレルギー性結膜炎、皮膚に出る花粉皮膚炎があります。

《原因》

花粉症は、花粉によるアレルギー疾患で、体内に花粉が侵入すると抗体(IgE)ができ、体内の肥満細胞表面の抗体(IgE)に抗原となる花粉がくっつくと、肥満細胞から炎症物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が分泌され、それが目のかゆみ、異物感、充血、流涙などが起こり、目やにが出ます。鼻粘膜では、くしゃみ、鼻汁分泌、鼻閉が起こります。花粉症の原因となる植物というと、スギ・ヒノキが知られていますが、実は一年中飛散しています。目や鼻の症状が2週間以上続くようでしたら、花粉症を疑ってもいいかもしれません

《症状》

主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみです。これらがさらに二次的な症状を引き起こすことがあります。鼻づまりや鼻汁により、口呼吸になり喉の不調(イガイガ、咳、痰、喘息発作、ウイルス感染など)だったり、頭痛、頭重、微熱、だるさなどの全身症状や、下痢、吐き気、腹痛など消化器症状も示すこともあります。近年では、アトピー性皮膚炎の有無関係なく、乾燥やかゆみを発症する花粉皮膚炎もみられます。

《検査・診断》

血液検査でアレルギーに関連のある好酸球やIgE抗体を調べます。鼻汁の好酸球を顕微鏡で見ることもあります。原因物質を特定するために、皮膚の上にアレルゲンの溶液を垂らし、針で軽く引っかき反応を見るスクラッチテストなどがあります。

《治療》

花粉が飛散しているときはなるべく外出を控え、外出するときはマスク・眼鏡を着用し、帰宅時は家に入る前に服についた花粉を払い落とします。薬物療法は抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、点鼻用ステロイド薬などの対処療法を中心に行います。症状を和らげるアレルゲン免疫療法もあります。免疫舌下療法が知られていますが、長期の継続治療(3~4年)を休まずする必要があります。

東洋医学の花粉症への取り組み

東洋医学では、花粉症などのアレルギー性疾患に対する施術として

・鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状の緩和

・花粉症になりにくい体質改善

の両方を同時に行います。

西洋医学で行われる薬物療法では、眠くなるなどの副作用が心配されますが、はりきゅう施術では副作用がありません。鼻づまりや鼻水、目のかゆみなどで即効性があり、花粉症はストレスが原因ともいわれていますので、鍼灸施療で全身調整をすることで症状の緩和に期待ができる施療といえます。週に1~2回の施術を3,4か月続けることで、花粉症の症状が出なくなる患者さまは9割ほどです。効果を実感していただくためにも、症状が出る4か月以上前からの施療をお勧めいたします。

アレルギー性鼻炎

慢性鼻炎

Posted by harikyu-lapure